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フリゲ雑記14

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 秋ですね。色んな秋がありますが、自分にとっては創作の秋です。暑い気候より寒い気候のほうが我慢できるし、秋は食べ物もおいしいし(スープ類を好むので、温度的にもちょうど良い)、秋の鈍色の空とか紅葉に色付いた木々とか、芒とか彼岸花などの幻想的な景観とか、目も舌も感受性も肥えていく創作の秋です。うれしー!
 ずっと悩んでいた絵に対するスランプも、ちょっと脱出口が見えてきた気がします。上手くなったかって言われると、そうでもないんですけど、ちょっと描くときに肩の力が抜けたり、絵を描くときの心意気とかも変化してきて、描くのがそこまで苦痛にはならなくなってきました。これもまたうれしー!

 あとは創作意欲が出てきて、何度か小説を書きたいという意欲が出てきているところでしょうか。カードワースのリプレイ風小説を書きたいって、数年くらい前からずっと思っているけれど、なっかなか筆が進まないもので、それどころか筆を執ってすらいないものなのですが。
 2012年くらいに執筆活動が苦になって、それ以来、ちょっとした短編を書いてみては疲れて休み、書いてみては休み、とイラストほど継続できてはいない。これのスランプもイラストと同じく、「上手く書けなくてつらい」というものだった。
 フリゲの雑記でもたまに「上手く言葉がまとまんねえ!!」って筆を放り投げたり、書いている最中はちっとも文章が纏まっていない気がしていますが、読み返してみると、意外とそこまで散文しておらず、まあまあ纏まってる事実は多々ある。

 技巧にこだわらずに書きたいなと思えども、なかなか筆を執れないのはどうしてかなあ。まだどこかで好き放題に書くのは恥ずかしいと思っているのだろうか。投稿サイトなどに投げるとしたら、そういう外聞とか評価とか気にはなるだろうけれど、こういった場末の閲覧している人がいるかどうかもわからない個人ブログやサイトであれば、気にせず伸び伸びと書けると思うんだがなあ。
 長編や中編を書こうとしているから怯えているのかもしれない。目標をもうちょっと低く定めて、自分でも書けるレベルにまで落とせば、書けるんではないだろうか。ここで載せてる独白みたいに。気負わずに書きたいなあ。

 そんなこんなで秋バージョン、プレイしたフリゲの感想を書いていきます。

 以下のフリゲの感想を書いています。
 各タイトルを押すと、そこまで自動でスクロールされます。

■炎天下、土瀝青に灼かれる女を(体験版)(ADV)
■色のない詩―ウタ―(ADV)
■案件:RoomNo666(ADV)
■葬無(スゴロクADV)
■月夜の夜道でJKが追いかけられるお話(ADV)
■貝木機械怪異課(ADV)
■暴食の街(ACT)

■炎天下、土瀝青に灼かれる女を(体験版)(ADV)
 ほんの数分で終わる体験版でしたが感想を書かせてくださいお願いします!!

 あまりにも素敵な演出などに痺れたので取り急ぎ筆を執りまして、ちょっと感想をしたためます。
 過去作品ですと、「人体パズル」「コウフクノオリ」などを手がけた作者さんといえば、どこか本作での雰囲気を掴みとれる人がいるのではないのでしょうか。わからない? そうか、なるほど。
 乱雑に表現するなれば、人体欠損や壮絶な惨状が目前で行われている反面、キャラクターたちはそのことに対して過剰に反応せず、「なんか酷いことになってるね」とどこか達観して淡白に接している、そういったホラー表現があるにも関わらずホラーと感じさせない、そんな奇異な作風が総じて特徴的です。

 言葉がうまく纏まんねえ!(筆を遠くに放り投げる)

 本作は体験版とあり、プレイ時間もおよそ数分程度のものですが、ひとまずの物語としての区切りができているので、体験版は体験版で超短編の物語として楽しむことはできます。今のご時世、1分とか3分のゲームもあるので、そういうゲームに内包されると思えば特に体験版というより、一つのゲームとしても楽しめることでしょう。

 作者さんが「演出強化のためのゲーム」と述べていたように、今までの作品から進化して、演出面が数分程度の中でも物凄く濃密に強化されています。
 グラフィック面が自作ドット絵なのは過去作品から変化はないのですが、それに加えてアニメーションも少し滑らかになったり、物語の演出も過去作と比較して巧みになっていたり、主人公の行動次第で物語が変動するといった独自の分岐機能があったりと、とかく短いながらも演出が魅力的な作品となっています。

 具体例を挙げますと、まず目覚めた時に起きるか寝るかの二択を選択するんですが、通常であれば選択肢コマンドが出てきて「寝る」「起きる」とか文字で選択するのですが、今作は徹底してその選択コマンドの文字を排除して、アイコンのみに留めているかつ、「左キー」「右キー」のどちらかで瞬時に選択できるという、ちょっと今までとは体験した経験のない選択の仕方がとても良かったです。
 あと、ベランダで遠くの様子を見るとき、ボーっと眺めてるだけでEDが分岐したときは物凄く驚いたし、「時間経過でED分岐するんだ!」と凄く細やかな演出の配慮に感動した。
 他にも物語上の演出のあらゆる仔細を語りつくしたいものですが、体験版といえどもネタバレのオンパレードになってしまうので、本当にわずか数分でプレイできるので、ぜひともここは実際に手にしてプレイしていただきたい。

 体験版の多くは、「途中が気になって眠れない!」といった生殺し状態になることが多いのですが、こちらは綺麗に小さく体験版用の物語として纏められているので、まだそこまで苦しみは少ない……と思う。
 とはいえ、完成版が物凄く楽しみです……。


■色のない詩―ウタ―(ADV)
 みちにまよったら たかいばしょをさがして うえをめざしつづけて
 たとえ、つかれはてても……。


 高い場所を目指して歩きつつ、物語の真相を考察するホラーADVです。EDは2つ。道中の主人公の行動により、分岐の道が開かれます。露骨な脅かし要素はありませんが、精神を侵食してくるような恐怖演出や、逃走要素などがあります。

 高い場所とは言いますが、一概にマップを見て「どの方角が高い場所なのか」といった見当をつけることはできません。2Dマップであれば、上方向が自然と登る行為になりますが、こちらではその感覚はあてにならず、逆に下方向が高い場所へ行くことにもなります。
 それらの高い場所を知るシステムの一つとして、「高い場所に向かうとスタミナが減る」というものが導入されています。無論、高い場所に登ってスタミナが減ると、歩くスピードも遅くなり、スタミナが尽きると歩けなくなります。山登りと一緒ですね。
 スタミナが減る方向、もしくはなんらかの指示に従って向かう場所が、主人公が目指すべき「高い場所」です。さあ、がんばって、いちばんたかいばしょにいこう。

 ほんとにたかいばしょにいくの?

 物語の詳細はそこまで語られず、その考察材料となる情報がいくつか断片的に散らばっている程度で、主人公に何が起こったのか、妹は、家族は、これは一体全体どういうことなんだ? といった節を具体的に提示してくれることはほぼありません。
 その状況の曖昧さや不安定さが、逆に高いホラー演出に繋がっていると思われます。BGM自作ってほんとですか。信じられない。音による恐怖演出はなかなかのものでした。

 初め、あの白い物体と出会ったときは、「わあ、手が生えてきて、なんか後ろ姿がゴマフアザラシが立ったみたいで可愛いなあ」程度でほのぼのとしていました。しかし、その3秒後には恐怖に悲鳴を上げて、絶望感に苛まれて逃げ惑っていた。何がゴマフアザラシだよ怖すぎる。ほのぼのできるか……!!
 殺人鬼とか敵対人物が襲ってくるのは、襲う理由が明確化されてるのでドキドキはしつつもそこまで恐怖感はないのですが、こういう訳の分からない、見知ったものでもない、どういった理由で襲ってくるのかさえも不明瞭な異形の存在は、襲ってくるだけで恐怖の塊ですね。捕食目的だけではなく、友好関係を結ぼうとして好意的に近付いてきて襲う異形もいる。

 また言葉がうまく纏まんねえな!(筆をさらに遠くへ放り投げる)

 白い物体の見た目の怖さもそうですが、滑らかにアニメーションするから余計に怖く感じるところもあるのだと思う。ゲーム内のキャラクターや物体は、アニメーションが滑らかであればあるほど、存在している息吹を感じられる。
 背後から襲われたり、変異したり、それらのアニメーションが凄く滑らかなので、より恐怖感が実体を伴って襲ってきている感覚があるのだろう。いや、外見もシンプルに怖いですが。

 本作では特に、物語の詳細が難解だという声をちらほら見かけた。確かに、一周しただけではぼんやりわかったような、わからないようなといった感覚で終わるかもしれない。EDの2つでの感想も「どちらも救いがない」という声をよく聞いたが、よくよく考えてみたら、ちょっとだけ違うかもしれない。
 また言葉と思考が散らばりかけてるので、霧散しないうちに書き綴っておきます。ちょっと一部ネタバレ部分ですが、重要なところは白字で伏せていきます。
 と思ったんですけど、思ったより長文&伏字を適宜反転するのが面倒そうなので、一気に全文字伏字にするので反転して読んでください……全部考察パートです。

 ↓ここから
 まず、本作では幻と現実とが入り乱れていて、今いるところが全部幻なのか、この情報は真実なのかと、凄くうやむやです。時系列もどうなってるんだろうと、やや不明瞭である。今のところ現実のもので、真実であると思われるのは、スマホ内の情報と機器に保存された音声、紙に書かれた情報などが本物かなと考えてます。
 ゲーム内での現実世界は、自分はED2の分岐点で、下に降りて白い物体から逃げた後に目覚めた後の、家のマップだけが現実世界と思っています。他は幻ではないのかなあ……。
 スタート地点でもう、誘惑に打ち勝ち目を覚まして現実を見るか、声の誘導に乗って高い場所を目指すかで、分岐地点となっていると思う。……時系列とか状況から話しだすと、ちょっとこれもまた支離滅裂になってますね。まずは主人公の状況から話したほうがいいかもしれない。

 作中で出てくる情報、ヤグラタケとエントモファガ・グリリの特徴の二点から察するに、その二つの性質を兼ね備えた白い物体が、主人公の中に寄生しているのではないのかと考えられる。
 上記の二つの性質をざっくり書くと、ヤグラタケはキノコに寄生して栄養分を吸い取り成長する特性があり、エントモファガ・グリリは昆虫などに寄生して、より遠くへその胞子を飛ばすために昆虫を高いところに登らせるといった特性があります。

 主人公が高い場所に行こうとするのは、このエントモファガ・グリリの影響でしょう。たぶん、山で助けの声を聞いた際にその白い物体に遭遇して寄生されてしまったように思う。
 母親の手帳には妹の名前は「ウタ」と表記されてるので、妹の名前は「シオリ」ではなく「ウタ」だと考えられる。途中で「シオリはばけものだった」云々言うシーンがあるので、「シオリ=白い物体」かなと思ってます。
 一周目のときは、てっきり主人公が父と母を殺したと思ってたのですが、血の足跡を見るに、父が母を包丁で刺して、自身は毒物を注射して自害したように見える。生態系に詳しそうなので、自前で有毒植物から摂取した毒かなあ。同じものが父の書斎らしき場所にもあり、調べてみると「触れようとしたら父に怒られた」と出たので。
 どうして殺したのかまでの動機がちょっとまだ確定していませんが、ED2の家の中が白い菌のようなものに侵食されていたので、主人公に寄生していたものが胞子をまき散らして、身内にも影響が出てきているのか、それとも「山に行こう」と家族を誘って彼等にも寄生して、家に持ち帰り、もろもろに気付いた父がこれ以上の被害を食い止めるべく、母を刺して自害したのかもしれない。

 時系列は、妹のスマホで随時追加されるメモから推測する。まず、主人公は山で迷子になって寄生されて帰ってくる。次に、寄生がどんどん深刻になっていって、体も脳もコントロールされつつある。この辺りから、極端に高所が怖くなったり、「シオリ」の安否を確かめたり、探そうとどこかへ飛び出したりしようとする。(ED2の両親の寝室、ゴミ箱の中にある破られたノートに、ちょっと見えづらいが伏字だった部分が「シオリ」と書かれている。妹の名前はウタである)

 妹が脳腫瘍に侵されたおじさんのエピソードを語っているが、主人公もそれと似たような状況に陥っている。(主人公の日記の、右の破られたページの左上に、小さな文字で見えにくいが「私じゃない なにかに言わされてる」と書かれている)
 床下収納にあったボイスレコーダーの言葉は、ちょっと認識しづらいが「ウタ……ウタ……」って呼んでるように聞こえる。なんだろう。抑え込まれた主人公が、どうにかして脳と体の主導権を取り戻そうともがいてるのかなあ。

 それで、最後の日付のメモ帳では、家族みんなで近くの山に行く予定という話で終わっている。「あんなに怖がってたのに、どうして行きたいなんて言い出したんだろう」って書いてあるが、もうこの時点で完全に乗っ取られていて、これは主人公の口から出た言葉ではないのだろう。その結果、家族にもその白い物体が寄生してしまったのではないのかなあと考える。

 ここで一つ疑問点があるのだが、母と父の死体はあるが、それでは妹のウタはどこにいるのか? といった点である。デジタルカメラのデータにある動画の内容と、妹のメモ帳の最後の日付、冒頭での出来事などから、もしかすると主人公に突き落とされたんじゃないのかなと考えてる。おそらく死んでいる。なぜ突き落としたのかはわからない。殺意も理由もなさそうな気がする。

 もしくは、妹の方にも白い物体が入り込んで、主人公よりも先に「たかいところにいった」のかもしれない。OPの部分だけ見ると、先に妹が山の奥へ行き、妹を追うと崖下に倒れている。
 エントモファガ・グリリの性質は、「昆虫の死に際に、胞子をより遠くへ飛ばすために高いところに登らせる」とはあるが、今作の場合は人間の死に際を待ってたらいつになるかわからないので、「高いところに登らせて死なせる」という順序が逆の性質を持っているのかもしれない。

 そして、始まりでもあり、分岐点でもあるスタート地点。登ってしまえば、寄生した者の意図通り、主人公は高いところに登って崖から落ちて死ぬことになるが、降りようとすれば、寄生した者から自身の体と脳のコントロールを奪うために抵抗し、これ以上の胞子が飛ばないよう、他の誰かに寄生してしまわないよう、菌が繁殖した家に火を放って主人公は死ぬ。
 そのどちらも報われない死ではあるけれど、一種の抵抗をして、抗いながら死んだ面ではわずかばかりの希望的なEDがあるような気がするなあと考えています。そういった面では、ギリギリのところでこの物語は「どちらも救われないED」ではないと思っている。

 ふと思ったけれど、作中で主人公が話すとき、普通に話しだすときと、選択肢(一つしかない)を押してセリフを話すときの二種類で主人公が言葉を発するのだけど、もしかするとこれ、選択肢の言葉は主人公が言っているのではなく、「言わせている」のであって、「プレイヤー=寄生した者」とか頭を過ぎって勝手に震えてたのですが、これもまたふと湧き出た仮説にすぎないので忘れてください。

 ↑ここまで

 以上、長々とした走り書きの考察でした。ホラー演出とシステムの噛み合いが最高に良いので、ぜひとも。


■案件:RoomNo666(ADV)
 未知なるウイルスの影響で、撮影されたホラー映画に本来登場しえない異質な怪異が紛れ込み、脚本通りに映画が始まらなくなってしまった。プレイヤーである主人公は異物を駆除する「クリーンソフト」を使用して、映画の中にある怪異を取り除く依頼を受けたのであった……。

 探索ADVというより、ポイントクリック式のADVが近いでしょうか。異物と思われる怪異にキーカーソルを合わせ、決定キーを押すことで排除することができます。EDは1つ。スタッフロール(映画内のものではなく、きちんとしたゲーム内でのもの)が流れるところまでプレイするのです。この物語はクリーンソフトをいじって終わりではない……。

 とはいえ、まず初見であらゆる怪異を見つけ出して、ノーミスで取り除いていくのは難しいかもしれません。脅威をもたらす怪異の場合、問答無用で映画内のメインヒロインを殺しにきます。なんの恨みがあるんだ。この映画内では、ヒロインが死ぬことは脚本上、まずありません。殺されてしまうと、瞬時にスタッフロールが流れて強制的に映画が終わってしまいます。
 ……と理解しつつも、死亡シーンをじっくりと見てしまうのが人間の醜いサガですね。本編内に明らかに似つかわしくない怪異が訪れるシュールさと、本来の脅かし役が「ええ……?」と呆然とするような殺戮行為に、不本意ながらも微笑んでしまった。通り魔的に脈略もなく殺しにくる。本当になんの恨みがあるんだ。

 チャプターを一通り終えると、途中からチャプター選択できたり、駆除した怪異のTIPSを見ることもできます。映画内でのキャラクターのドット絵も細やかに動き回るので、ぜひ色々な場面を見ていただきたい。怪異をすべて取り除いた映画の内容も、これはこれで良い出来具合の映画だと思います。


■葬無(スゴロクADV)
 家の中に、殺人鬼の気配がする。殺人鬼と遭遇しないように、家の中からステルス&逃走して脱出するホラーADVです。ただし、逃げられるかどうかはダイスの目次第である。

 敵から逃げるとなると、素早いキー操作と敵の行動パターンを読む洞察力など、ちょっとしたアクション要素が交わるので、ホラーは大丈夫だけど逃走要素が苦手! という人もいることでしょう。ホラーに逃走は付き物でもあるので、なかなか折り合いがつかないこともままあるかもしれません。
 しかし、今作はご安心あれ。逃走要素はありますが、複雑な操作は必要ありません。あなたも殺人鬼も、お互い決められたダイスの数しか動けませんし、熟考してどちらの方角に動くかを決めることができます。目の前に殺人鬼がいたとしても、「さて、どう逃げようか」と、悠長な顔して腕を組んで、目の前で唸りながら逃げるルートを考えることが出来るのです。

 出た目の数により行動回数が決まるという、一風変わったシステムですが、「今目の前にいる殺人鬼から逃れることができるかどうかは、出たダイスの目による」というダイスの女神の運と気分次第で事態が変動するので、そのハラハラ感もまた別の恐怖演出を盛り上げてくれます。
 ダイスの運に見放されているときは、どうあがこうが追いつかれて滅多刺しにされる運命にあるし、ダイスの目が好調であっても、敵の気配を察知できなければ、出会い頭に衝突して滅多刺しにされる結末にもなるし、敵に捕まらなくとも罠にかかって体力がなくなって死ぬ場合もある。とても楽しい。

 たとえ敵の視界内に捉えられたとしても、何かに隠れることで回避することは可能です。また、止まるマス目によってはランダムでイベントが発生するところがあります。ラッキーであれば、必要アイテムをや体力を回復するアイテムを入手できるでしょう。アンラッキーな場合は、体力を削ったり、敵を呼び寄せる大きな音を立ててしまう場合があります。

 開始前に難易度設定ができるので、初めは優しめの難易度で挑んで、どういったルールなのかを把握してみましょう。運とはいえ、優しい難易度であればダイスの女神さまも微笑んでくださっています。慣れてきたらハードモードに挑戦してみましょう。もうダイスの女神様は素知らぬ顔です。ここからは本物の運での挑戦が待ち構えています。鬼! 悪魔!
 ですが、ハードモードをクリアすることで知り得る結末もあります。ぜひともその真相を見るべく、己の運を試しにハードモードもクリアしてみましょう。運が良ければ好調でクリアできますよ! 運が良ければ!!


■月夜の夜道でJKが追いかけられるお話(ADV)
 タイトルがゲームの概要をおおよそ説明してくれている。その名の通り、月夜の夜道でJKを追いかけるお話です。一言一句、間違った情報は伝えていません。はい。さらに情報を付加するなれば、これはジャンルを分類するとホラーにあたります。どこがどういった部分がホラーなのか、というのはプレイしてみれば自ずと把握できることでしょう。

 ……さて。タイトル、概要、ジャンルから推測するに、「これって、18禁で胸糞が悪くなる系の話ですか?」と類推するのは致し方ありません。ですが察しの良い方は、このあまりにもお膳立てのような語句を見て、「このゲームは推測するものとは異なるゲームかもしれない」とも考えるかもしれませんね。

 ええ、これは迷いのないホラーです。純粋なホラーです。あれを見てホラーじゃないとは言えん……。
 シチュエーションやらなんやらで、後味が悪くなりそうな結末とか、胸糞の悪い展開とかも予測するかもしれませんが、幸いながらもその予測は外れます。いや、別の意味では胸糞の悪いところもあるかもしれないですが、追々考えてみると、これらのシチュエーションで決まった予測というか、「こういう状況ならこういう展開になるに違いない」という一抹の期待とも言えることを想像していた時点で、ああ自分も作中内の悪党どもと同じ思考回路をしているのだと恥じ入るばかりで……。

 ええい、湿っぽい話はよせ!

 ネタバレを考慮すると、ほとんど何も言えなくなる……。このゲームの真相は、できれば実際に手に取って観測してほしいところがある。少なくとも言えることは、タイトルを見て期待しているようなキャッキャウフフなことは、ゲーム中に一切起こりませんということだけです。あとはホラー要素があるといった点など。
 うまいように舌が回らなくて悲しいですが、ぜひとも……ちょっと興味が湧いたらプレイしてみてください……。


■貝木機械怪異課(ADV)
 2020年8月29日現在、4話までリリースされている、ある工場での怪異課に所属する人たちにまつわる怪異のお話です。まだ本編は完結していませんが、1話ずつでそれぞれの怪異の話はひとまず完結しております。

 つらつらと紹介してきましたが、「案件:RoomNo666」から「貝木機械怪異課」まで、すべて同じ制作者さんの作品です。だからなんだというかんじですが、その中でお気に入りの作品がある人は、ぜひとも他の作品もプレイしてみてくださいというただのマーケティングです。はい。
 また、今作は過去作の「そこにいる」をプレイ済みだと、ちょっとした場面で既視感を覚えることでしょう。

 本編だ。ちゃんと舌回ってくれ。
 学校での怪異をテーマにした物語はたくさんありますが、今作は成人した大人たちが、至極真面目に職場の怪異に取り組む話です。怪異によって実害を被っているので仕事に支障が出るし、怪異を解決することができればもれなく報酬も出る。
 真剣な活動として怪異課は発足され、年齢や性別も個々異なる三人により構成されています。年長者でメンバーの中では一番穏和な渡鉾(わたほこ)課長、少し陰鬱そうな紅一点の女性社員の大豆生田(おおまみゅうだ)、荒々しさと実直さを備えた男性社員の鈴本(すずもと)の三人で、怪異に対して調査・解決に向かって行動していきます。

 ジャンルはホラーとなっていますが、そこまで強烈なホラー要素はなく、謎解きや即死要素などもありません。基本的に「会話」をして、「探索」し、「移動」するの繰り返しで物語は進んでいきます。ストーリー重視なので、複雑なアクションを求められることもありません。
 第1話は怪異課の発足と初の怪異である「おばけフォークリフト」の調査、第2話では消えた工具を探す捜索、第3話では事故の予言をする謎の動画から、事故を未然に防ぐ調査、第4話では工場近くにある長いトンネルの怪異の調査と、各話ごとに小さな怪異を調査して解決に導く形となっています。

 初めのうちは、実害とは言えども微々たるものの些細な怪異だったはずが、徐々に身の危険を感じるような怪異に巻き込まれていき……。怪異のことも気になるものですが、ちょっとした複雑な人間模様も描かれているのでその点も注目です。
 4話の続きはまた……乞うご期待……。(生殺し状態)


■暴食の街(ACT)
 富裕層たちが集う街中で、大きな屋敷に住んでいる少女ロザーナ。彼女は傲慢で偏食であり、一つでも気に食わなければ暴言を吐き、食べ物も一口食べて皿ごと投げ捨てるなど、粗暴な行いは日常茶飯事であった。
 そんなある夜。大きな物音と悲鳴で目が覚め、音の元へと辿ってみると、そこには人が人を食らう凄惨な景色が待ち受けていた……。

 人ならざる者を拳銃で撃退する、爽快さ溢れるアクションADVとなっています。アクションも楽しいですが、時折挟まれる重厚さのあるイラストやスチルもイチオシです。美しい……。
 画面から漂う濃厚さに、重厚なシナリオを期待してしまうかもしれませんが、反面わりとキャラクターとのやり取りなどはそこまで重々しくなく、少しコミカルでもあります。ご両親のキャラが濃すぎて、どこをどうしたらこんな美少女が産まれるんだと首が一回転しているほどです。ゾイザマス夫妻……名は体を表すとは言うが、風貌もそれっぽく見えてくる……。

 少女の傲慢さは揺るぎないものです。ツンデレではなく一切デレない。召使いに対しても侮蔑の眼差し。富裕層に住む人々に対しても、「愚民」と一蹴するほどの気高さ。そんな彼女が主人公でもあるので、開始早々なかなか好感を持てない人がいるかもしれません。
 私ですか? ありがとうございます、我々の業界ではご褒美です。そのピンヒールでちょっと踏まれて罵られたいと思っちゃうレベルでロザーナ嬢が好きです。あと単純に、揺るぎない意志を持つ悪者とかが好きなのかもしれません。

 しかし、さすがに異様な事態を目の前にすれば、いかに傲慢さを備えていても怯えてしまうもので、初っ端の人食いのシーンでは大層衝撃的なものだったと思われます。プレイヤーにも大打撃のグロ表現です。
 途中で生きている人を見かけても、合流する前にその人物が人ならざる者に食われてしまったりと、いつの間にやら一夜のうちに街中は阿鼻叫喚の地獄と化しています。そして、ようやく合流できた銃を持った男性も、安心できたと思いきや……。

 こんな散々な出来事が続けば、誰しも心が折れてしまう。いくら強がっていても、ロザーナは力の持たない富裕層に住む一介の少女です。だからまさか、あそこであんな展開になるとは思ってなかったんですよ……。

 あのイベント後、力なくくず折れて「もう嫌だ!」と泣き崩れると思っていたんです。仕方がない。そりゃあ、目の前で見知った人が見知った人を食って、両親も道連れになって敵になり、街中もパニックで四面楚歌の状態なのだから、泣き言の一つや二つ、こぼしたくなる。だから次の一言は、そういった弱音が出てくるのかと思っていたんです。ところがどっこい、現実は違った。
「この愚民共がーーーーッ!!」思わず笑ってしまった。ロザーナちゃんでもさすがにこれは参るだろうと思ってたのだが、まさか逆ギレして反逆するとは思わなんだ。思っていた以上に彼女は強い子だった……。

 アクション要素は、そこまで難しいと感じた覚えはありません。クリスタルを調べれば、いつでも体力を回復できるし、銃弾も補充できます。ありがたい。敵との距離を保って銃を撃っておけば、とりあえずは死ぬことはないと思います。一部即死攻撃を持つ敵がいますが、当たらなければどうということはない……。
 どの敵にやられたかによって、死亡シーンのスチルが変化するのは凄いですね。細やかな差分。美しい絵を見るために、わざわざ敵に突っ込んで死ぬのもいいかもしれません。

 EDは一つのみ。なぜこの街がこんな事態になったのかは予測の範囲内でしたが、その結末を迎えた後の展開までは読めませんでした。ああ、そうか、そうなってしまうか……。でも、これはこれで、ある意味ロザーナちゃんらしいといえばらしい展開だなあ……。踏んでください……。