フリゲ雑記17
- CATEGORYフリゲ感想
しばらくフリゲをする時間がないのと、感想文を書く気力が出てこないので、三ヶ月くらい前に書き溜めていたフリゲ雑記を畳んで投下しておきます。
以下のフリゲの感想を書いています。
各タイトルを押すと、そこまで自動でスクロールされます。
■偶弦 ~人形の糸~(ADV)
■廃品回送(ADV)
■flle!(脱出ADV)
■オイクメネ(ADV)
■偶弦 ~人形の糸~(ADV)
中国産のフリゲで、日本語版として配布されたのが2014年とかなり昔になりますが、あの頃プレイしたときからずっと思い出に残っていて、先日再びプレイしなおして「ああ~~~、昔と変わらず凄く良かった~~~!」と感慨深げに頷きながらED回収してきましたので、奮い起こしてそのときの感銘を書き記します。
見覚えのない一室で目を覚ました少女、細音(さざね)ちゃんを操作して、謎の屋敷から出口を探すホラーとダーク要素のある探索ADVです。一部逃げ要素や避け要素がありますが、そこまで難しいものではありません。本編にある謎解きの多くは、館内にある童話に紐づけられたものが多いので、すべての本に目を通しておくのが良いでしょう。読書楽しいから読んでくれ。
ED数は全部で5つ(細かいのを含めると+1つ)。トゥルーEDを迎えると、今まで見てきたイラストのギャラリーや、ED達成数によって、各キャラクターたちの詳細が解禁されます。
さて、どこから魅力を語ろうか……また力が入りすぎたら何も書けなくなるから、気楽にいくぞ……。
まず、目を惹かれるのが美麗なイラストでしょうか。物憂げで儚さのあるイラストのタッチが、ダークホラーな探索ADVの作風と非常にマッチしています。もうこれビジュアル関係を褒めたたえるときに毎回思うことなんですけど、文章だけで視覚の優美さを表現するのに限界があります。この文章を読む暇があるのならば、タイトル名を検索窓にぶち込んで、DLして即刻遊んでください。今すぐ! さあ!
イラストが綺麗なだけで安易に激推しはしませんので、他にも魅力的な点を細々と語ります。いの一番はイラストですけども。
本作品は2時間~3時間ほどでプレイできる短編となっていますが、短いながらもしっかりと中身が濃厚です。屋敷の広さも、そこまで広すぎず、狭すぎずといった、丁度よい塩梅のマップです。
何より、作りがとても細かい。会話中は立ち絵だけではなく、キャラチップも頷いたり首を傾げたりするし、調べるときも戸棚を開いたり、開かなくても戸口に手をかけるモーションが入ったり、上下に物がある時は上下別に調べたテキストと、それに対応して細音ちゃんの顔が上を向いたり下を向いたり、その他にも椅子に座れたりベッドで眠れたり、電灯をつけたり消したりと、探索するたびに細かい反応が返ってきて喜びに震えながら終始プレイしていました。凄い。凄すぎる。
キャラチップでの細かな反映もそうですが、それ以外にもマップ間の移動が凄く滑らかに行われている。ちょっとこれも文章で説明するのは難しい。感覚的なものなのですが、通常マップからマップに移動する際は多少のラグやウエイトがかかるものなのですが、そういった類をほぼ感じられず、「室内から廊下」「廊下から室内」などでもプレイヤーがそのまま地続きで操作している実感を持ちながら、マップを移動することができるんですよ凄い。
本当、これはもう感覚的なものなので、自分でも「なんでスムーズに移動できていると感じるんだろう?」って疑問符がたくさん湧きます。大抵、マップ移動のときは1秒間くらい画面が一時停止して暗転が入って、マップが切り替わってと、ごくごく短い間でも「待つ」ことを強制させられるのですが、本作品に関してはその僅かな待機時間さえないように感じられる。なぜ!?(錯覚なのか、何らかの技術が施されているのかわからない)
ちょっとあまりにも不思議すぎるのでもう一度ゲームを起動して、部屋を出たり入ったりして検証してみたのですが、おそらく……おそらく、「キャラクターがその場で一時停止して暗転が入って瞬間移動せず、移動部分の天井下(視覚的に見えない)部分までギリギリ操作できる、かつ移動後は以前のマップから出てきたように天井下(視覚的に見えない)部分からトコトコと歩いて出てくるので、地続きでマップ移動しているように見えている」のかもしれない……! 文章で見てもわかんねえな! プレイしてくれ!!
あとプレイしていて気付いたんですが、決定キーを押さずとも触れるだけで扉が開くの結構、操作性快適ですね……。頑なに扉は決定キー押す派なんですが、本作は扉に触れてドアを開けても、すぐに移動処理が行われるわけではないので、誤作動で移動して、あとで元のマップに戻るという手間がない。さらに加えて、「やっぱり移動やめよう」と思ってその場から離れると、扉が自動で閉まる仕組みになっている。ど、どこまで手が込んだ処理が組まれてるんだ……?
あとこれは個人的に好きな部分なんですが、階段の昇降部分で、移動できる箇所だけ薄らと天井が半透明になってて「ここ通れるんだな」と、感覚的に行ける場所がわかるのがとても配慮が行き届いていて好きです。もう訳が分からない。
操作性だけでとてつもない文章量になってますね。それだけ、操作している際の快適さがずば抜けて良かったです。無意識の中に刷り込まれてるくらいに。ゲームをプレイする上で、操作性をそこまで重視したりはしないんですが、調べて細やかに反応したり、快適さを感じると凄く記憶に残っているなあ……。
そろそろ切り上げて、キャラクターや物語のことでもお話しましょうか。
日本語として綺麗に訳されてはいますが、物語全体が漠然としているので、ここらは人によっては好みがわかれるかもしれません。私はこういうのが大好きですどんとこい考察。
全EDを回収すれば、なんとなくの輪郭を捉えられると思います。ED回収後の補足も見逃さずに見よう。あと同梱フォルダに置かれている「名前の由来」txtもきちんと読もう。
各キャラクターが魅力的すぎるので、「主要人物以外のキャラクターの話を深掘りしてほしい」といった旨の感想をちらほら散見しましたが、物語の主軸が若旦那の弦君なので、これはこれで語らないことに意味があるのだと思っています。あくまでも三人は脇役でしかないんだろう。いや、それぞれの過去とかめちゃくちゃ知りたいのは確かですが! 魅力的過ぎんだよオ!
以下、各EDと物語の考察を伏字で。
↓ここから
まず、少女たちの言う「祈りの人形」とやらについて。作中内で語られてるので深く話すこともない気がしますが、「人形に現世の苦痛を身代わりになってもらう代わりに、自分たちの居心地の良い環境に、永遠に居続けることができる」のが、少女たちの噂になっている「祈りの人形」の儀式です。だがしかし、それは表向きである。
おそらく真相は、少女たちの命を食らって、屋敷の一家が生きていた頃の夢を一時的に見させることができる儀式、ということになるだろうか。ちょっと日本語がへん。あの人形たちは、弦君のパパが呼び出した悪魔とかなのかなあ。弦君の形を装って弦君のパパが本編に出てるので、ちょっとややこしくなる。
あの世界に弦君はいない。魔術で失敗して、腕の中で息を引き取っている。少女たちも、自分達が望む環境を提供されているが、それと同じように、少女たちの儀式が成功すれば弦君のパパが理想とする、「妻も息子の弦も生きている環境」の夢を見ることができるのが、なんとも……なんとも皮肉だ……。日本語がへんだ……。
主人公と弦君以外のことは、もう本当に情報量がそこまでなくて、おそらく二人のことに集中してほしいから割愛したのだと思う。姉妹については恐ろしいくらいに情報が見えないし、パートナー役になりそうだと思われた新蕗さんも、多少の物語を開示してくれるが、早々にリタイアしてしまう。他の少女たちに立ち絵がついていることと、新蕗さんは親身に世話してくれたことから、「彼女たちのことをもっと知りたい」と思ってしまうのだろうなあ。だが本編の中では彼女たちはあくまで脇役です。どのEDにも救い出す術はありません。無慈悲!
主人公の細音ちゃんが唯一助かるEDはあるっちゃあるのですが、それもまたバッドな雰囲気を残して幕を閉じます。当初、遠ざかっていく三人の影を「屋敷にいた少女三人」と思って、「彼女たちを救えないまま、自分だけが生き残ってしまった……」と解釈してしまったのですが、違いますねこれ。違いました。
スチルを見るために入る「焦げ臭い開かずの扉」の先にあるイベントを見ればわかるのですが、遠ざかっていくのは細音ちゃんが幼少期に火事で亡くした両親と兄の三人のことで、「屋敷から遠ざかる=両親と兄が生きていた理想の環境を諦めて辛い現実に戻る」という表現だったのですね。奇遇にも少女三人とマッチしてしまったので、こちらのことだと解釈してしまった。(イベントの途中、細音ちゃんが誰かを追って弦君と離れ離れになるが、あれはおそらくお兄さんだろう)
で、さらに物語の解釈を搔き乱すのがTrueEDでしょう。あんまり深く考察しないで解釈するに、「この物語の本当の主人公は弦君だった……?」です。細音ちゃんが主人公だと思ってて、少女らと弦君を助けて脱出すると思いきや、弦君だけ助けて新しい人生を送る結末になった……。いやでも、本当のところはどういうことなのかまだ理解できていない。
最後に出てくるのが幼少期の細音ちゃんと、本来の姿の弦君の二人だけなのと、あとは玄関から呼ぶ誰かの声と、弦君との会話から推測できる人物などからしか考察できないのですが、たぶん「細音ちゃんは幼いときのまま、弦君家族に迎え入れられた」のかなあと考えている。二人の歳の差がどれだけ離れてるかはわからないが、「お兄ちゃんのことは好き?」って言ったときに「細音ちゃんのお兄ちゃんのこと」を指しているのかと思いましたが、その後の言葉で「じゃあ、ずっと一緒だよ」と言ってるので、自分のことを指しているのかなと推察。
あと、ひとときの夢を見るほうのマップと同じマップでしたので、あの家はおそらく弦君一家の家だと思っている。
ええと、纏めると……。
おそらく、弦君の中にいるパパは消えて、しかし本来の弦君自身は生き残る道を辿り、どうしてかお母さんも生きる道を辿り、細音ちゃんは辛い時期を過ごすはずだった「家族を火事で失う現実」を忘れるために、火事で失う前の姿である幼少期の姿のまま、弦君一家に迎え入れられる道を選んだ……のか……?
まだちょっとしっくりとこないですね。想像の余地が色々とあるからでしょう。ご都合主義的に考察するなら、そんな感じになります。もう少し、現実的に予測をつけて考察した結果を話してみましょうか。もうちょっとだけ、考察のお付き合いをしてください。
①細音ちゃんは、家族を失った現実から目を背けた結果、屋敷に訪れた。
実績解除の補足と、本編のイベントや現実に帰還するEDから推察するに、彼女自身は本来の現実に戻ることは望んでいない。
幼い姿のままなのも、大人になった彼女=家族を失ったことを想起させてしまうため、まだ家族が健在だった頃の「幸せだった時期」の姿を借りているのだろう。
②儀式は確実なものではない。
この儀式は、「対象者が理想とする環境を、少しだけ体験させることができる」儀式である。人形たちが勝手に少女たちを導いているだけなので、弦君パパは特に干渉はしていないと思う。……が、人形=契約した悪魔だとすれば、過去に魔術で呼び出したのかもしれない。(「もうこんなことは止めなきゃいけない」と言っていたので)
「ときどき(儀式が)成功したとき、幸せな夢を少しだけ見ることができる」と言っていたので、この儀式自体は不完全なものであり、完成されていない。
③弦君のパパが望んでいることは、「息子の弦と妻が生きている環境」である。
でもって、TrueED手前の部屋では「自分はもうすぐ消える」とも言っていたので、「少女たちが理想の環境を求めて犠牲になる数と比例して、彼自身の命も同時に削られている」のかもしれない。
彼自身が意識的に望んでなくても、元来魔術をし始めたのも「妻を生き返らせるため」といった「自らの理想の環境を求めての召喚」だったので、ある意味、その契約は律儀に履行され続けている。(+αで「息子も生き返らせる」という項目が増えただけ)
上記のことから推測して、最後の展開って、「未完成だった儀式を完全なもの」にして、「細音ちゃんは、家族を失わない幼少期の姿のまま、かつ別の形として家族という構成を維持する」願いを、弦君のパパは「息子と妻が生きている(自分がいるのが望ましいが、最低条件として二人だけでも生きていてほしい)」願いを叶えたのではなかろうか。
つまりこれはメリーバッドエンド……!
ここまで熱く語ってきましたが、考えすぎな気がしてきましたね。長々と語りましたが忘れてください。
↑ここまで
あと、一部の謎解きで詰まる人が出てくるかもしれない。自分が詰まりかけただけで、サラッと行ける人は行けるかもしれないが。お料理の配膳で詰まった場合は、「食べる順に料理を提供する」「サラダという名を冠したサラダじゃないもの」この二点に気を付ければどうにかなると思います。
また、ED分岐は弦君に対する言動による好感度の高低で一部EDの展開が分岐します。(+1EDのところは、EDタイトルの後ろに「END?」とハテナがつくので、ED実績解除の一つとしては加算されません。ご注意を)
あとは……スチルを見るために「入るのを止められる扉」に入る条件とかでしょうか。入れないことがわかると、周回プレイの際にイベントを無視しがちですが、そこへ入るためにはきちんと「入る素振を見せるイベントを見る」必要が出てきます。フラグさえ立ってしまえば、あとは時期が来たら入れるようになれます。
他にも、自分が取り逃している細かいサブイベントみたいなものがあるような気がする……開始時のメモを読む選択で「読まない」に選択したときにツッコミが入ったときも、ある意味偶然見られたイベントだ……。(公式ページでは渡り廊下のスクショがあるのだが、自分ではそこに行くことができなかった)
進行や分岐に応じて、前の場所でも変化が訪れたりしているので、ぜひとも探索しつくしてください。細かく作り込まれているので、思わぬところで意外な反応が返ってくるかもしれません。行動が見透かされている……! 歓喜……!
■廃品回送(ADV)
階級制度により管理された社会で、生活を営む兄妹のお話です。横スクロールADVとなっていますが、謎解き要素などはなく、物語重視でノベル要素が強めとなっています。
前作の「L0ST M@IL」から引き続き、今作も自作のグラフィックです。短編とはいえ、グラフィックの質が圧巻。錆びれた鉄筋コンクリート、廃棄された機械、虚空に浮かぶ電子掲示板、怪しく光るネオンの輝きなど、見事にSFさと退廃的な世界観を演出されています。凄い……。
あらゆるものが機械により管理されており、主な仕事もロボットに任され、住民は飼い慣らされたかのように現況に甘んじて堕落的な生活を送り続けています。階層ごとに生活様式が異なり、1~9階層に振り分けられ、1に行くほど「富裕層」として重んじられる環境に身を置けるようになります。
主人公たちは第7階層を居住区としており、両親と妹と自分の四人でアパートに暮らしていましたが、父の酒癖の悪さと度重なる暴力や家庭内不和により、母は妹を連れて家を出ていってしまいました。そして、物語はその数年後から始まります。
EDは2つ。ディストピア感溢れるこの居住区で、楽しく慎ましく身の丈に合った生活をして生きましょう。
……よし、本日も舌が絶不調である。頑張って感想を書くぞ。
前作もSFチックで世界観が似ていて、「温かい物語だ」といった印象があったのですが、今作はそんな温かさも打ち消すような冷酷な世界となっています。向こう側が光の世界であるならば、こちら側は闇の世界です。ようこそ。
階級制度で居住区や生活の質が管理されているとはいえ、住んでいる人達は現況に不満を持たずに満足な顔をしています。絶望しているとかではなく、自分は身の丈に合った生活をしていると刷り込まれてしまっているからです。産まれたときから脳内には管理するためのICチップも埋め込まれています。さすがSF。出たなSF。
見た目や生活環境こそ貧民街といった体をしていますが、さすが管理社会、さすがSF、技術が発達しているので機械が仕事を務めているので細かいことを除けば環境はきっちりと整備されています。
その上、働かなくとも日々の生活が送れるという生活保障(質は保障されていない)つきです。堕落的な人間が大多数を占めているので、むしろ働こうとする人間を指差して「おかしい人だ」と奇異な目で見てきます。「質はともかく、働かなくても誰からも責められず、気兼ねなく生きていけるとか素晴らしいな」とちょっとでも思ってしまったので、半分この世界に片足を踏み込んでいるのかもしれません。ハハッ。
ただこれは物語の舞台となる第7階層から得た情報なので、他の階層は他の階層で生活様式が異なるようです。最後まで全貌は明かされませんが、上層に行けたからといって幸福かと問われると、第4階層の様子を見る限り、そうでもないような感じがしますね……。
なんかずっと世界観の話してますね。ええと、キャラクターや物語……。
妹のミヨちゃんが人間ではないということに気付いたのは、レストランでの一枚絵で「ちょっと首のところが変だな?」と違和感を持って、その後の立ち絵もよく見てみたら首元にボルトらしきものが見えて、疑念が確信に変わりました。ああ……ゴミ山から落ちてきた時点でなんとなく嫌な予感はしていたんだ……。
そして、どれだけ目を擦ろうともEDの数は2つです。どのような結末を送ろうとも、EDは2つです。いいですね?
どちらのEDも心を殴打する展開が待ち受けていますが、個人的にまだED1は救いがあると思っています。超絶ポジティブ思考でいくと、憎い父親の存在を抹殺できたし、妹のミヨちゃんもよくわからない機械に殺されるより、自身が頼んだように兄の手で逝く方がまだ良いだろうし、「死は救済でもある」と思ってるので「お兄さんには悪いが、妹のミヨちゃんがようやく苦しみから解放された」と捉えることもできる。
……睨まないでください。自分の「脳内ハッピーエンドに変換する超絶ポジティブ思考」ではこれが限界です。ポジティブ思考というよりサイコパスに偏ってますが、この結末をどう救いがあるかと解釈するなら狂った思考にならざるを得ない。
ただこれもまた、「ミヨちゃん視点ならどう思うか」という解釈に過ぎず、どちらのEDも主人公に待ち受けているのは絶望しかないので、もうただ主人公が選択できるのは妹の死を自分以外に殺られるか、せめて妹の頼みを聞いて自分の手で殺るかの二択しかない。何なのだこれは! どうすればいいのだ!?
世界観が短編ながらもなかなかに濃厚なので、詳細はぜひとも手に取っていただいて、味わいつくしてください。
■flle!(脱出ADV)
気が付くと、見知らぬ密室にいた。声をかけてくれた学生服の少女に見覚えもなければ、自分自身に関する記憶もない。どうにかして密室から脱出するべく、無音の室内を見回すのであった……。
ドット絵が滑らかに動く、クリックタイプの脱出アドベンチャーとなっています。「とにかく完成させるを目標に制作した」通り、作りは非常にシンプルで、用意された謎解きも出口の扉にある入力タイプの一つのみです。謎解きに慣れた人であれば、数十分もかからず攻略することができることでしょう。
ED数は2つ。EDを1つ回収すれば、残りのEDへの到達方法のヒントも親切に教えてくれるので、難なく辿り着くことができます。
この作品の醍醐味は謎解きではなく、ドット絵の滑らかな描写と、複数の死亡シーン(一部ランダム)にあると思っています。物凄い。
タイトル画面で少女が瞬きしたのにも凄かったし、さり気なく少女の立ち絵もアニメーションするのにも驚いたが、アイテムを調べてコマンドを決めた後のアニメーションや、死亡する際の謎のあの技術。よ、よくわからない……あれがどうなっているのかよくわからない……凄い……ただただ感嘆しながら死に絶えていってました。
超短編といえども、この高水準のグラフィックと丁寧さが練り込まれているので、そこそこの満足感がありました。むしろよくぞ完成して世に出してくれました。ありがとうございます、ありがとうございます……。短編でも結構大変だと思うので、この水準を保ちながらの中編はさらに大変だと思う……超短編でも英断です、ありがとうございます……。
謎解きは「慣れた人であれば簡単」とは書きましたが、私のような頭の固い謎解き苦手人間である場合、たった一つの謎解きに苦しめられることが大いにあることでしょう。前回の謎解き合宿の経験がまったく活かせていない。なんでや……。
ただ、脳裏に「これ、十進法にしろ系の謎解きじゃないよな? ハハ、まさか!」と過ってはいたので、惜しいところまできていた。まさかじゃない。それだよ。
幸いにも制作者さんが紹介ページにヒントを記載していただいていたので、なんとかして解くことができました。ありがたい。途中、再び自分の頭の固さが発揮して、「変換した十進法をそのまま入力画面にぶち込む」という、ゲーム内のヒントの存在を抹消した訳の分からないことをしていましたが、結果オーライです。石頭だけではなく鳥頭でもある……。
全体的に滑らかなアニメーションが用意されているので見ていて楽しいのですが、丁寧に死ぬのでその分描写がより生々しいところがあります。本当に謎の技術で生々しく死ぬ。
初めての死は机の上にあるオロナミンを飲むところでした。見知らぬ場所に置いている飲食の時点で怪しさ満点な上、けれど選択肢が少女か自分が飲むかの二択でしたので、「いきなり押し付けるのもな。毒味と称して飲んでみるか」と冗談で決断したところ、本当に毒で死ぬとは思いませんでしたよ……凄い衝撃だった……。
しかしすべてが終わったクリア後、再びあの衝撃を実感したくて同じ死の道を辿りたくなるほど、同時に美しくもある。凄いなあ……ただひたすら凄い技術だ……。
■オイクメネ(ADV)
とあるところで、「あらゆる怪異が集まってくる奇妙な一軒家」という噂が流れていた。その家に肝試しに訪れた姉弟は、謎の怪異に見舞われ、事態は思わぬ方向へと転がっていく……。
……わかるぜ、今日の舌は不調だ。感想文が下手になってる。気合入れて書きます。
一軒家の中で弟とはぐれてしまい、彼を探すために家の中を奔走する脱出ホラーADVとなっています。EDは2つで、普通に進めれば見られる通常EDと、二周目で特定の行動をすることで見られるオマケEDの二種類があります。
一軒家の広さはさほど広くはないので、「この家で弟を探すだけなら、そんなに時間がかからないのでは?」と思いがちですが、普通にプレイしているとクリアまで約6時間くらいはかかる大変ボリューミーな作品となっています。
即死要素みたいなものはたくさんありますが、ゲームオーバーという概念はおそらくありません。追いかけっこ要素もありますが、マップ切り替えをすれば追手はいなくなります。ここまでは、ゲームによってはよく見受けられるシステムでしょう。
ここでのゲームで特殊な点は、二つのシステムにあります。
一つは、「主人公の姉は喘息持ちなので、長時間走ったり驚いたりすると呼吸が乱れ、最悪死ぬ」ということ。
一つは、「家の中は何種類にも複製されており、それぞれ番号が割り振られ、番号によって起こる現象が異なる」ということです。
たぶん、前者の意味はなんとなくわかると思いますが、後者の意味は「どういうことだ?」って首を傾げると思う。実際にプレイしていって慣れていくほうが楽しかったりやりがいがあるのですが、ちょっとだけシステムの補足説明しておきます。
まず前者の「長時間走ったり、驚いたりすると呼吸が乱れ、最悪の場合死に至る」というシステム。
その名の通り、ダッシュしたり怖い目に遭ったりすると、鼓動音が激しくなり、なんの対処も施さないと死んでしまいます。視覚的に「今どれくらいヤバいか」というのはわからないので、鼓動音の激しさを聴覚で頼って対処する必要があります。
対処法としては、ダッシュしないで歩行・もしくは立ち止まったり、数に制限がある吸入薬を使うことで、落ち着かせることができます。
次に、後者の「家の中が何種類にも複製され、それぞれ番号が割り振られ、番号の家によって現象が異なる」というシステム。
本編でも一応は説明されますが、その説明イベントに行くまでにプレイヤー側でこのルールを理解する必要があります。というか、理解して進めるようにならないと、その本題である説明イベントにまで辿り着けなかったりする。シビア~~!
それぞれの家に、「家1」「家2」といったように番号が割り振られています。そして、それがわかるのは、その「家1」に至る入り口の扉の側にある番号のみです。「家1」の中に入ってしまうと、ここが「家1」なのかどうか、それとも「家2」なのかがわからなくなります。
そのために、我々は調査員のごとく、「家1」に入ったら、まずは「家1にしかない情報や物」などをメモに書く必要があります。そうすることで、現在地がどの番号の家かわからなくなった場合、「この家にはこれがあるから、これがある家は家3しかないな」と判断し、自分の今いる場所を把握することが可能になります。
前者の要素だけでもかなり探索に制限が出てくるのですが、二つ目のシステムがさらに難易度を上げています。ゲームをクリアするには、このシステムと仕組みを完全に理解し、上手に利用する必要が出てきます。ルールを無視して行き当たりばったりで行動すると、おそらく延々と家の中を彷徨うことになるだろう。
公式ページでも「メモを取ること推奨」と言われているように、この家の中は複雑怪奇で、マップなしで歩き回るには酷く困難です。それゆえに、軽い気持ちで遊ぼうとすると確実に玉砕するので、こちらのゲームをプレイの際は、どっしりと腰を据えるつもりで挑んでください。
さて、ここまで長々とシステムの複雑さと難易度が高めであることを説明してきましたが、ルールを把握してのめり込むと6時間なんてあっという間で、新しい番号の家を探索しつくすのがとてつもなく楽しいゲームであることを前面的に主張していきたいです。物凄くやり応えがあって、たんのしい!
普段、ゲームプレイ時は謎解きくらいしかメモ(アナログ)を取ることはない上、極力メモを取らない面倒くさがりな人間なんですが、こちらは手持ちのメモ帳では書ききれないほどの情報量である上、メモを確実に取らないと進めないため、付属のメモ帳で部屋番号と情報を入力していってました。ゲームをする上でこんなにも細かくメモを取ったのは初めてな気がします。
初めこそ億劫だったものの、部屋番号の情報を埋めていくにつれて、物凄い快感に囚われていきました。未知の情報を、自分自身で探索して気になる点を書いていき、また訪れたことのない部屋番号を見つけたら、そこへ行って情報を書き記す。
番号によって、どの番号の家に繋がるかも考えながら移動しなければならないため、さながら未開拓地のマッピングをしている探検家の気分を味わうことができました。大変だけれど、拾った情報がどんどん繋がっていく快感は凄まじかったです。
システム自体、なかなか味わえない斬新さと魅力な点がありますが、物語も引けを取らない魅力があって、思いもよらぬ展開で虚をつかれました。うわーーー、そうなるとは思わなんだ……!
システムの構造、物語の構成、そのどちらも隙のないほど緻密に練り上げられた、遊び応えのある作品となっています。お時間の余裕と歯ごたえのあるゲームをお探しの際は、ぜひともどうぞ!
以下のフリゲの感想を書いています。
各タイトルを押すと、そこまで自動でスクロールされます。
■偶弦 ~人形の糸~(ADV)
■廃品回送(ADV)
■flle!(脱出ADV)
■オイクメネ(ADV)
■偶弦 ~人形の糸~(ADV)
中国産のフリゲで、日本語版として配布されたのが2014年とかなり昔になりますが、あの頃プレイしたときからずっと思い出に残っていて、先日再びプレイしなおして「ああ~~~、昔と変わらず凄く良かった~~~!」と感慨深げに頷きながらED回収してきましたので、奮い起こしてそのときの感銘を書き記します。
見覚えのない一室で目を覚ました少女、細音(さざね)ちゃんを操作して、謎の屋敷から出口を探すホラーとダーク要素のある探索ADVです。一部逃げ要素や避け要素がありますが、そこまで難しいものではありません。本編にある謎解きの多くは、館内にある童話に紐づけられたものが多いので、すべての本に目を通しておくのが良いでしょう。読書楽しいから読んでくれ。
ED数は全部で5つ(細かいのを含めると+1つ)。トゥルーEDを迎えると、今まで見てきたイラストのギャラリーや、ED達成数によって、各キャラクターたちの詳細が解禁されます。
さて、どこから魅力を語ろうか……また力が入りすぎたら何も書けなくなるから、気楽にいくぞ……。
まず、目を惹かれるのが美麗なイラストでしょうか。物憂げで儚さのあるイラストのタッチが、ダークホラーな探索ADVの作風と非常にマッチしています。もうこれビジュアル関係を褒めたたえるときに毎回思うことなんですけど、文章だけで視覚の優美さを表現するのに限界があります。この文章を読む暇があるのならば、タイトル名を検索窓にぶち込んで、DLして即刻遊んでください。今すぐ! さあ!
イラストが綺麗なだけで安易に激推しはしませんので、他にも魅力的な点を細々と語ります。いの一番はイラストですけども。
本作品は2時間~3時間ほどでプレイできる短編となっていますが、短いながらもしっかりと中身が濃厚です。屋敷の広さも、そこまで広すぎず、狭すぎずといった、丁度よい塩梅のマップです。
何より、作りがとても細かい。会話中は立ち絵だけではなく、キャラチップも頷いたり首を傾げたりするし、調べるときも戸棚を開いたり、開かなくても戸口に手をかけるモーションが入ったり、上下に物がある時は上下別に調べたテキストと、それに対応して細音ちゃんの顔が上を向いたり下を向いたり、その他にも椅子に座れたりベッドで眠れたり、電灯をつけたり消したりと、探索するたびに細かい反応が返ってきて喜びに震えながら終始プレイしていました。凄い。凄すぎる。
キャラチップでの細かな反映もそうですが、それ以外にもマップ間の移動が凄く滑らかに行われている。ちょっとこれも文章で説明するのは難しい。感覚的なものなのですが、通常マップからマップに移動する際は多少のラグやウエイトがかかるものなのですが、そういった類をほぼ感じられず、「室内から廊下」「廊下から室内」などでもプレイヤーがそのまま地続きで操作している実感を持ちながら、マップを移動することができるんですよ凄い。
本当、これはもう感覚的なものなので、自分でも「なんでスムーズに移動できていると感じるんだろう?」って疑問符がたくさん湧きます。大抵、マップ移動のときは1秒間くらい画面が一時停止して暗転が入って、マップが切り替わってと、ごくごく短い間でも「待つ」ことを強制させられるのですが、本作品に関してはその僅かな待機時間さえないように感じられる。なぜ!?(錯覚なのか、何らかの技術が施されているのかわからない)
ちょっとあまりにも不思議すぎるのでもう一度ゲームを起動して、部屋を出たり入ったりして検証してみたのですが、おそらく……おそらく、「キャラクターがその場で一時停止して暗転が入って瞬間移動せず、移動部分の天井下(視覚的に見えない)部分までギリギリ操作できる、かつ移動後は以前のマップから出てきたように天井下(視覚的に見えない)部分からトコトコと歩いて出てくるので、地続きでマップ移動しているように見えている」のかもしれない……! 文章で見てもわかんねえな! プレイしてくれ!!
あとプレイしていて気付いたんですが、決定キーを押さずとも触れるだけで扉が開くの結構、操作性快適ですね……。頑なに扉は決定キー押す派なんですが、本作は扉に触れてドアを開けても、すぐに移動処理が行われるわけではないので、誤作動で移動して、あとで元のマップに戻るという手間がない。さらに加えて、「やっぱり移動やめよう」と思ってその場から離れると、扉が自動で閉まる仕組みになっている。ど、どこまで手が込んだ処理が組まれてるんだ……?
あとこれは個人的に好きな部分なんですが、階段の昇降部分で、移動できる箇所だけ薄らと天井が半透明になってて「ここ通れるんだな」と、感覚的に行ける場所がわかるのがとても配慮が行き届いていて好きです。もう訳が分からない。
操作性だけでとてつもない文章量になってますね。それだけ、操作している際の快適さがずば抜けて良かったです。無意識の中に刷り込まれてるくらいに。ゲームをプレイする上で、操作性をそこまで重視したりはしないんですが、調べて細やかに反応したり、快適さを感じると凄く記憶に残っているなあ……。
そろそろ切り上げて、キャラクターや物語のことでもお話しましょうか。
日本語として綺麗に訳されてはいますが、物語全体が漠然としているので、ここらは人によっては好みがわかれるかもしれません。私はこういうのが大好きですどんとこい考察。
全EDを回収すれば、なんとなくの輪郭を捉えられると思います。ED回収後の補足も見逃さずに見よう。あと同梱フォルダに置かれている「名前の由来」txtもきちんと読もう。
各キャラクターが魅力的すぎるので、「主要人物以外のキャラクターの話を深掘りしてほしい」といった旨の感想をちらほら散見しましたが、物語の主軸が若旦那の弦君なので、これはこれで語らないことに意味があるのだと思っています。あくまでも三人は脇役でしかないんだろう。いや、それぞれの過去とかめちゃくちゃ知りたいのは確かですが! 魅力的過ぎんだよオ!
以下、各EDと物語の考察を伏字で。
↓ここから
まず、少女たちの言う「祈りの人形」とやらについて。作中内で語られてるので深く話すこともない気がしますが、「人形に現世の苦痛を身代わりになってもらう代わりに、自分たちの居心地の良い環境に、永遠に居続けることができる」のが、少女たちの噂になっている「祈りの人形」の儀式です。だがしかし、それは表向きである。
おそらく真相は、少女たちの命を食らって、屋敷の一家が生きていた頃の夢を一時的に見させることができる儀式、ということになるだろうか。ちょっと日本語がへん。あの人形たちは、弦君のパパが呼び出した悪魔とかなのかなあ。弦君の形を装って弦君のパパが本編に出てるので、ちょっとややこしくなる。
あの世界に弦君はいない。魔術で失敗して、腕の中で息を引き取っている。少女たちも、自分達が望む環境を提供されているが、それと同じように、少女たちの儀式が成功すれば弦君のパパが理想とする、「妻も息子の弦も生きている環境」の夢を見ることができるのが、なんとも……なんとも皮肉だ……。日本語がへんだ……。
主人公と弦君以外のことは、もう本当に情報量がそこまでなくて、おそらく二人のことに集中してほしいから割愛したのだと思う。姉妹については恐ろしいくらいに情報が見えないし、パートナー役になりそうだと思われた新蕗さんも、多少の物語を開示してくれるが、早々にリタイアしてしまう。他の少女たちに立ち絵がついていることと、新蕗さんは親身に世話してくれたことから、「彼女たちのことをもっと知りたい」と思ってしまうのだろうなあ。だが本編の中では彼女たちはあくまで脇役です。どのEDにも救い出す術はありません。無慈悲!
主人公の細音ちゃんが唯一助かるEDはあるっちゃあるのですが、それもまたバッドな雰囲気を残して幕を閉じます。当初、遠ざかっていく三人の影を「屋敷にいた少女三人」と思って、「彼女たちを救えないまま、自分だけが生き残ってしまった……」と解釈してしまったのですが、違いますねこれ。違いました。
スチルを見るために入る「焦げ臭い開かずの扉」の先にあるイベントを見ればわかるのですが、遠ざかっていくのは細音ちゃんが幼少期に火事で亡くした両親と兄の三人のことで、「屋敷から遠ざかる=両親と兄が生きていた理想の環境を諦めて辛い現実に戻る」という表現だったのですね。奇遇にも少女三人とマッチしてしまったので、こちらのことだと解釈してしまった。(イベントの途中、細音ちゃんが誰かを追って弦君と離れ離れになるが、あれはおそらくお兄さんだろう)
で、さらに物語の解釈を搔き乱すのがTrueEDでしょう。あんまり深く考察しないで解釈するに、「この物語の本当の主人公は弦君だった……?」です。細音ちゃんが主人公だと思ってて、少女らと弦君を助けて脱出すると思いきや、弦君だけ助けて新しい人生を送る結末になった……。いやでも、本当のところはどういうことなのかまだ理解できていない。
最後に出てくるのが幼少期の細音ちゃんと、本来の姿の弦君の二人だけなのと、あとは玄関から呼ぶ誰かの声と、弦君との会話から推測できる人物などからしか考察できないのですが、たぶん「細音ちゃんは幼いときのまま、弦君家族に迎え入れられた」のかなあと考えている。二人の歳の差がどれだけ離れてるかはわからないが、「お兄ちゃんのことは好き?」って言ったときに「細音ちゃんのお兄ちゃんのこと」を指しているのかと思いましたが、その後の言葉で「じゃあ、ずっと一緒だよ」と言ってるので、自分のことを指しているのかなと推察。
あと、ひとときの夢を見るほうのマップと同じマップでしたので、あの家はおそらく弦君一家の家だと思っている。
ええと、纏めると……。
おそらく、弦君の中にいるパパは消えて、しかし本来の弦君自身は生き残る道を辿り、どうしてかお母さんも生きる道を辿り、細音ちゃんは辛い時期を過ごすはずだった「家族を火事で失う現実」を忘れるために、火事で失う前の姿である幼少期の姿のまま、弦君一家に迎え入れられる道を選んだ……のか……?
まだちょっとしっくりとこないですね。想像の余地が色々とあるからでしょう。ご都合主義的に考察するなら、そんな感じになります。もう少し、現実的に予測をつけて考察した結果を話してみましょうか。もうちょっとだけ、考察のお付き合いをしてください。
①細音ちゃんは、家族を失った現実から目を背けた結果、屋敷に訪れた。
実績解除の補足と、本編のイベントや現実に帰還するEDから推察するに、彼女自身は本来の現実に戻ることは望んでいない。
幼い姿のままなのも、大人になった彼女=家族を失ったことを想起させてしまうため、まだ家族が健在だった頃の「幸せだった時期」の姿を借りているのだろう。
②儀式は確実なものではない。
この儀式は、「対象者が理想とする環境を、少しだけ体験させることができる」儀式である。人形たちが勝手に少女たちを導いているだけなので、弦君パパは特に干渉はしていないと思う。……が、人形=契約した悪魔だとすれば、過去に魔術で呼び出したのかもしれない。(「もうこんなことは止めなきゃいけない」と言っていたので)
「ときどき(儀式が)成功したとき、幸せな夢を少しだけ見ることができる」と言っていたので、この儀式自体は不完全なものであり、完成されていない。
③弦君のパパが望んでいることは、「息子の弦と妻が生きている環境」である。
でもって、TrueED手前の部屋では「自分はもうすぐ消える」とも言っていたので、「少女たちが理想の環境を求めて犠牲になる数と比例して、彼自身の命も同時に削られている」のかもしれない。
彼自身が意識的に望んでなくても、元来魔術をし始めたのも「妻を生き返らせるため」といった「自らの理想の環境を求めての召喚」だったので、ある意味、その契約は律儀に履行され続けている。(+αで「息子も生き返らせる」という項目が増えただけ)
上記のことから推測して、最後の展開って、「未完成だった儀式を完全なもの」にして、「細音ちゃんは、家族を失わない幼少期の姿のまま、かつ別の形として家族という構成を維持する」願いを、弦君のパパは「息子と妻が生きている(自分がいるのが望ましいが、最低条件として二人だけでも生きていてほしい)」願いを叶えたのではなかろうか。
つまりこれはメリーバッドエンド……!
ここまで熱く語ってきましたが、考えすぎな気がしてきましたね。長々と語りましたが忘れてください。
↑ここまで
あと、一部の謎解きで詰まる人が出てくるかもしれない。自分が詰まりかけただけで、サラッと行ける人は行けるかもしれないが。お料理の配膳で詰まった場合は、「食べる順に料理を提供する」「サラダという名を冠したサラダじゃないもの」この二点に気を付ければどうにかなると思います。
また、ED分岐は弦君に対する言動による好感度の高低で一部EDの展開が分岐します。(+1EDのところは、EDタイトルの後ろに「END?」とハテナがつくので、ED実績解除の一つとしては加算されません。ご注意を)
あとは……スチルを見るために「入るのを止められる扉」に入る条件とかでしょうか。入れないことがわかると、周回プレイの際にイベントを無視しがちですが、そこへ入るためにはきちんと「入る素振を見せるイベントを見る」必要が出てきます。フラグさえ立ってしまえば、あとは時期が来たら入れるようになれます。
他にも、自分が取り逃している細かいサブイベントみたいなものがあるような気がする……開始時のメモを読む選択で「読まない」に選択したときにツッコミが入ったときも、ある意味偶然見られたイベントだ……。(公式ページでは渡り廊下のスクショがあるのだが、自分ではそこに行くことができなかった)
進行や分岐に応じて、前の場所でも変化が訪れたりしているので、ぜひとも探索しつくしてください。細かく作り込まれているので、思わぬところで意外な反応が返ってくるかもしれません。行動が見透かされている……! 歓喜……!
■廃品回送(ADV)
階級制度により管理された社会で、生活を営む兄妹のお話です。横スクロールADVとなっていますが、謎解き要素などはなく、物語重視でノベル要素が強めとなっています。
前作の「L0ST M@IL」から引き続き、今作も自作のグラフィックです。短編とはいえ、グラフィックの質が圧巻。錆びれた鉄筋コンクリート、廃棄された機械、虚空に浮かぶ電子掲示板、怪しく光るネオンの輝きなど、見事にSFさと退廃的な世界観を演出されています。凄い……。
あらゆるものが機械により管理されており、主な仕事もロボットに任され、住民は飼い慣らされたかのように現況に甘んじて堕落的な生活を送り続けています。階層ごとに生活様式が異なり、1~9階層に振り分けられ、1に行くほど「富裕層」として重んじられる環境に身を置けるようになります。
主人公たちは第7階層を居住区としており、両親と妹と自分の四人でアパートに暮らしていましたが、父の酒癖の悪さと度重なる暴力や家庭内不和により、母は妹を連れて家を出ていってしまいました。そして、物語はその数年後から始まります。
EDは2つ。ディストピア感溢れるこの居住区で、楽しく慎ましく身の丈に合った生活をして生きましょう。
……よし、本日も舌が絶不調である。頑張って感想を書くぞ。
前作もSFチックで世界観が似ていて、「温かい物語だ」といった印象があったのですが、今作はそんな温かさも打ち消すような冷酷な世界となっています。向こう側が光の世界であるならば、こちら側は闇の世界です。ようこそ。
階級制度で居住区や生活の質が管理されているとはいえ、住んでいる人達は現況に不満を持たずに満足な顔をしています。絶望しているとかではなく、自分は身の丈に合った生活をしていると刷り込まれてしまっているからです。産まれたときから脳内には管理するためのICチップも埋め込まれています。さすがSF。出たなSF。
見た目や生活環境こそ貧民街といった体をしていますが、さすが管理社会、さすがSF、技術が発達しているので機械が仕事を務めているので細かいことを除けば環境はきっちりと整備されています。
その上、働かなくとも日々の生活が送れるという生活保障(質は保障されていない)つきです。堕落的な人間が大多数を占めているので、むしろ働こうとする人間を指差して「おかしい人だ」と奇異な目で見てきます。「質はともかく、働かなくても誰からも責められず、気兼ねなく生きていけるとか素晴らしいな」とちょっとでも思ってしまったので、半分この世界に片足を踏み込んでいるのかもしれません。ハハッ。
ただこれは物語の舞台となる第7階層から得た情報なので、他の階層は他の階層で生活様式が異なるようです。最後まで全貌は明かされませんが、上層に行けたからといって幸福かと問われると、第4階層の様子を見る限り、そうでもないような感じがしますね……。
なんかずっと世界観の話してますね。ええと、キャラクターや物語……。
妹のミヨちゃんが人間ではないということに気付いたのは、レストランでの一枚絵で「ちょっと首のところが変だな?」と違和感を持って、その後の立ち絵もよく見てみたら首元にボルトらしきものが見えて、疑念が確信に変わりました。ああ……ゴミ山から落ちてきた時点でなんとなく嫌な予感はしていたんだ……。
そして、どれだけ目を擦ろうともEDの数は2つです。どのような結末を送ろうとも、EDは2つです。いいですね?
どちらのEDも心を殴打する展開が待ち受けていますが、個人的にまだED1は救いがあると思っています。超絶ポジティブ思考でいくと、憎い父親の存在を抹殺できたし、妹のミヨちゃんもよくわからない機械に殺されるより、自身が頼んだように兄の手で逝く方がまだ良いだろうし、「死は救済でもある」と思ってるので「お兄さんには悪いが、妹のミヨちゃんがようやく苦しみから解放された」と捉えることもできる。
……睨まないでください。自分の「脳内ハッピーエンドに変換する超絶ポジティブ思考」ではこれが限界です。ポジティブ思考というよりサイコパスに偏ってますが、この結末をどう救いがあるかと解釈するなら狂った思考にならざるを得ない。
ただこれもまた、「ミヨちゃん視点ならどう思うか」という解釈に過ぎず、どちらのEDも主人公に待ち受けているのは絶望しかないので、もうただ主人公が選択できるのは妹の死を自分以外に殺られるか、せめて妹の頼みを聞いて自分の手で殺るかの二択しかない。何なのだこれは! どうすればいいのだ!?
世界観が短編ながらもなかなかに濃厚なので、詳細はぜひとも手に取っていただいて、味わいつくしてください。
■flle!(脱出ADV)
気が付くと、見知らぬ密室にいた。声をかけてくれた学生服の少女に見覚えもなければ、自分自身に関する記憶もない。どうにかして密室から脱出するべく、無音の室内を見回すのであった……。
ドット絵が滑らかに動く、クリックタイプの脱出アドベンチャーとなっています。「とにかく完成させるを目標に制作した」通り、作りは非常にシンプルで、用意された謎解きも出口の扉にある入力タイプの一つのみです。謎解きに慣れた人であれば、数十分もかからず攻略することができることでしょう。
ED数は2つ。EDを1つ回収すれば、残りのEDへの到達方法のヒントも親切に教えてくれるので、難なく辿り着くことができます。
この作品の醍醐味は謎解きではなく、ドット絵の滑らかな描写と、複数の死亡シーン(一部ランダム)にあると思っています。物凄い。
タイトル画面で少女が瞬きしたのにも凄かったし、さり気なく少女の立ち絵もアニメーションするのにも驚いたが、アイテムを調べてコマンドを決めた後のアニメーションや、死亡する際の謎のあの技術。よ、よくわからない……あれがどうなっているのかよくわからない……凄い……ただただ感嘆しながら死に絶えていってました。
超短編といえども、この高水準のグラフィックと丁寧さが練り込まれているので、そこそこの満足感がありました。むしろよくぞ完成して世に出してくれました。ありがとうございます、ありがとうございます……。短編でも結構大変だと思うので、この水準を保ちながらの中編はさらに大変だと思う……超短編でも英断です、ありがとうございます……。
謎解きは「慣れた人であれば簡単」とは書きましたが、私のような頭の固い謎解き苦手人間である場合、たった一つの謎解きに苦しめられることが大いにあることでしょう。前回の謎解き合宿の経験がまったく活かせていない。なんでや……。
ただ、脳裏に「これ、十進法にしろ系の謎解きじゃないよな? ハハ、まさか!」と過ってはいたので、惜しいところまできていた。まさかじゃない。それだよ。
幸いにも制作者さんが紹介ページにヒントを記載していただいていたので、なんとかして解くことができました。ありがたい。途中、再び自分の頭の固さが発揮して、「変換した十進法をそのまま入力画面にぶち込む」という、ゲーム内のヒントの存在を抹消した訳の分からないことをしていましたが、結果オーライです。石頭だけではなく鳥頭でもある……。
全体的に滑らかなアニメーションが用意されているので見ていて楽しいのですが、丁寧に死ぬのでその分描写がより生々しいところがあります。本当に謎の技術で生々しく死ぬ。
初めての死は机の上にあるオロナミンを飲むところでした。見知らぬ場所に置いている飲食の時点で怪しさ満点な上、けれど選択肢が少女か自分が飲むかの二択でしたので、「いきなり押し付けるのもな。毒味と称して飲んでみるか」と冗談で決断したところ、本当に毒で死ぬとは思いませんでしたよ……凄い衝撃だった……。
しかしすべてが終わったクリア後、再びあの衝撃を実感したくて同じ死の道を辿りたくなるほど、同時に美しくもある。凄いなあ……ただひたすら凄い技術だ……。
■オイクメネ(ADV)
とあるところで、「あらゆる怪異が集まってくる奇妙な一軒家」という噂が流れていた。その家に肝試しに訪れた姉弟は、謎の怪異に見舞われ、事態は思わぬ方向へと転がっていく……。
……わかるぜ、今日の舌は不調だ。感想文が下手になってる。気合入れて書きます。
一軒家の中で弟とはぐれてしまい、彼を探すために家の中を奔走する脱出ホラーADVとなっています。EDは2つで、普通に進めれば見られる通常EDと、二周目で特定の行動をすることで見られるオマケEDの二種類があります。
一軒家の広さはさほど広くはないので、「この家で弟を探すだけなら、そんなに時間がかからないのでは?」と思いがちですが、普通にプレイしているとクリアまで約6時間くらいはかかる大変ボリューミーな作品となっています。
即死要素みたいなものはたくさんありますが、ゲームオーバーという概念はおそらくありません。追いかけっこ要素もありますが、マップ切り替えをすれば追手はいなくなります。ここまでは、ゲームによってはよく見受けられるシステムでしょう。
ここでのゲームで特殊な点は、二つのシステムにあります。
一つは、「主人公の姉は喘息持ちなので、長時間走ったり驚いたりすると呼吸が乱れ、最悪死ぬ」ということ。
一つは、「家の中は何種類にも複製されており、それぞれ番号が割り振られ、番号によって起こる現象が異なる」ということです。
たぶん、前者の意味はなんとなくわかると思いますが、後者の意味は「どういうことだ?」って首を傾げると思う。実際にプレイしていって慣れていくほうが楽しかったりやりがいがあるのですが、ちょっとだけシステムの補足説明しておきます。
まず前者の「長時間走ったり、驚いたりすると呼吸が乱れ、最悪の場合死に至る」というシステム。
その名の通り、ダッシュしたり怖い目に遭ったりすると、鼓動音が激しくなり、なんの対処も施さないと死んでしまいます。視覚的に「今どれくらいヤバいか」というのはわからないので、鼓動音の激しさを聴覚で頼って対処する必要があります。
対処法としては、ダッシュしないで歩行・もしくは立ち止まったり、数に制限がある吸入薬を使うことで、落ち着かせることができます。
次に、後者の「家の中が何種類にも複製され、それぞれ番号が割り振られ、番号の家によって現象が異なる」というシステム。
本編でも一応は説明されますが、その説明イベントに行くまでにプレイヤー側でこのルールを理解する必要があります。というか、理解して進めるようにならないと、その本題である説明イベントにまで辿り着けなかったりする。シビア~~!
それぞれの家に、「家1」「家2」といったように番号が割り振られています。そして、それがわかるのは、その「家1」に至る入り口の扉の側にある番号のみです。「家1」の中に入ってしまうと、ここが「家1」なのかどうか、それとも「家2」なのかがわからなくなります。
そのために、我々は調査員のごとく、「家1」に入ったら、まずは「家1にしかない情報や物」などをメモに書く必要があります。そうすることで、現在地がどの番号の家かわからなくなった場合、「この家にはこれがあるから、これがある家は家3しかないな」と判断し、自分の今いる場所を把握することが可能になります。
前者の要素だけでもかなり探索に制限が出てくるのですが、二つ目のシステムがさらに難易度を上げています。ゲームをクリアするには、このシステムと仕組みを完全に理解し、上手に利用する必要が出てきます。ルールを無視して行き当たりばったりで行動すると、おそらく延々と家の中を彷徨うことになるだろう。
公式ページでも「メモを取ること推奨」と言われているように、この家の中は複雑怪奇で、マップなしで歩き回るには酷く困難です。それゆえに、軽い気持ちで遊ぼうとすると確実に玉砕するので、こちらのゲームをプレイの際は、どっしりと腰を据えるつもりで挑んでください。
さて、ここまで長々とシステムの複雑さと難易度が高めであることを説明してきましたが、ルールを把握してのめり込むと6時間なんてあっという間で、新しい番号の家を探索しつくすのがとてつもなく楽しいゲームであることを前面的に主張していきたいです。物凄くやり応えがあって、たんのしい!
普段、ゲームプレイ時は謎解きくらいしかメモ(アナログ)を取ることはない上、極力メモを取らない面倒くさがりな人間なんですが、こちらは手持ちのメモ帳では書ききれないほどの情報量である上、メモを確実に取らないと進めないため、付属のメモ帳で部屋番号と情報を入力していってました。ゲームをする上でこんなにも細かくメモを取ったのは初めてな気がします。
初めこそ億劫だったものの、部屋番号の情報を埋めていくにつれて、物凄い快感に囚われていきました。未知の情報を、自分自身で探索して気になる点を書いていき、また訪れたことのない部屋番号を見つけたら、そこへ行って情報を書き記す。
番号によって、どの番号の家に繋がるかも考えながら移動しなければならないため、さながら未開拓地のマッピングをしている探検家の気分を味わうことができました。大変だけれど、拾った情報がどんどん繋がっていく快感は凄まじかったです。
システム自体、なかなか味わえない斬新さと魅力な点がありますが、物語も引けを取らない魅力があって、思いもよらぬ展開で虚をつかれました。うわーーー、そうなるとは思わなんだ……!
システムの構造、物語の構成、そのどちらも隙のないほど緻密に練り上げられた、遊び応えのある作品となっています。お時間の余裕と歯ごたえのあるゲームをお探しの際は、ぜひともどうぞ!